経営企画ポジションなどで、管理会計や予実の分析を任せられる方もいるでしょう。多くの場合社長の指示は「会社の経営状況を明らかにしてほしい」と言う趣旨で発せられると思われます。しかしこうしたアウトプットのためには、適切なインプットが必要不可欠。特にスタートアップの場合、データ収集が最初のハードルとなる可能性も高いです。
そこで情報を100%網羅できる管理会計を作るための、データインプットの確認箇所を11ポイントにまとめました。
インプットデータは債権・債務・経費・ KPIの4つに分けて考える
インプットデータは債権・債務・経費・ KPIの4つに分けて考えるのが良いです。経営層が一番イメージしているのは「KPI」の可能性も高いですが、実際には債権・債務の方が、データを集めるのが大変。なのでこちらから見ていきます。
債権(受注)データの集計・管理
まずは最近データ(受注データ)の確認から。これはいわゆる売上のデータに該当します。ここでは、
②各債権のステータス(入金済/未入金)が把握できているか
の2つが確認ポイントとなります。
①は、取引先企業の情報全てが集約されている必要があります。そして②は、①のうち、どこまでの債権が回収済かを正しく集約できているかが確認ポイントになります。これは実態としては営業管理であり、正しい決算のためには営業管理が必要であるということもできます。
債務(発注データ)の集計・管理
続いては債務データの確認。基本的には債権データと確認ポイントは同じです。
④各債務のステータス(支払済/未払)が把握できているか
⑤各債務の会計計上ルール(勘定科目)が決められているか
債務の場合、それぞれの支払いをどの勘定科目で処理するべきか?という点は、経理経験を問われるポイントになります。ただ各請求書ごとにいちいち判断していてはらちがあかないため、社内で明確なルールを用意すべき。
逆に言えば、基本的なルール設計さえできてしまえば、そうした業務を外注するなりすることができ、社内のリソースはより生産性の高い業務へ回すことができます。
経費精算の集計・管理
1つ目は社員建て替えの経費精算。ここは債権や債務と比較すると金額も小さいため、決算処理においては、少しプライオリティーを下げても良いポイントです。
一方社員が一時的に費用を立て替えているものになりますので、その経費精算が適切に実施・申請されているか?がメインの確認事項になります。いわゆるガバナンス・コンプライアンスという視点です。
⑦各債務のステータス(支払済/未払)が把握できているか
⑧各債務の会計計上ルール(勘定科目)が決められているか
KPIの集計・管理
最後は、顧客数などの会社のKPI。ここでは、決算に乗ってこないような指標を対象にしています。したがって、
が確認ポイントとなります。
制度会計から管理会計
債権・債務・経費のデータが適切に制度会計へ取り込めていることが確認できたら、いよいよ管理会計の整備に移ります。ここでは、
⑪それを実現するキーが、決算データ内にあるか(部門コード、プロジェクトコードなど)
の2点を確認する必要があります。
特に⑪については、制度会計視点では不要なデータを場合によっては追加する必要があります。そしてそうしたデータは、決算作成のタイミングで追加するのではなく、支払い等を申請するタイミングで、すべての申請書に入力がされていなければ二度手間となります。
「管理会計」を業務スコープにしたとしても、制度会計面まで手を広げていかなければならないのはこのためです。
確認ポイントまとめ
②各債権のステータス(入金済/未入金)が把握できているか
④各債務のステータス(支払済/未払)が把握できているか
⑤各債務の会計計上ルール(勘定科目)が決められているか
⑦各債務のステータス(支払済/未払)が把握できているか
⑧各債務の会計計上ルール(勘定科目)が決められているか
⑪それを実現するキーが、決算データ内にあるか(部門コード、プロジェクトコードなど)
制度会計〜管理会計フローをSaaSで実現するなら
ここまで解説してきた業務フローを、既存のサービスで実現させるのであれば、以下のような組み合わせが1つのテンプレートとなるでしょう。
・発注管理:kintone (給与関連:SmartHR / 債務関連:freee)
・出納・制度会計:freee、MFクラウド *銀行口座と連携できるものを推奨
・管理会計・レポート:board・委託先:メリービズ、Brownie Works
ここで注意していただきたいのは、こうしたサービスの導入はフローを構築してから行うべきという点。システムだけ急いで導入しても、業務効率化データの集約にはつながりません。まずはしっかり業務設計をした後、SaaSの導入を検討するということが大切です。
委託先の例で記載している2社は、単なる業務のアウトソースだけではなく、業務設計部分からサポートしてくれます。そのあたりの社内リソースが不足している場合は、検討の価値ありでしょう。