管理部門には、各事業部門からデータを提出してもらうことで作業が始まる業務が多く存在します。データを提出してもらうプロセスをA、管理部門の作業をBとした場合に、このA→Bのプロセスをどのように構築・周知すべきかについて検討します。
どのように社員とコミュニケーションするか
このプロセスを構築した後、社員に周知する方法は大きく2つ考えられます。
わかりやすくするために具体例で考えてみましょう。ここでは請求書を確認して支払うというプロセスを考えてみます。
受領した請求書をもとに、経理で支払いを行うプロセス:B となります。
一般的には、社員へのコミニケーションは①で行うことになるでしょう。つまり締め切りまでに請求書を提出してもらえれば、経理で支払いを行いますという会話の仕方です。この業務に明確な必要性があり、各社員がそこそこ真面目であれば、この説明で問題ないはずです。
しかし会社によっては、この説明ではどうしても動いてくれない部門がいるケースもあります。特に管理部門が有能であり、短納期でいろいろな作業をこなしてしまっている場合。締め切りに間に合わないケース、イレギュラーなケースも管理部門の応用力により、継続的に対応をしていると、各社員は「ルールを守らなくてもちゃんと対応してくれるんだ」と思ってしまいがちです。
こうした風土になってしまった会社の場合は、先程の②の方式でコミュニケーションをする必要が出てきてしまいます。今回の具体例のケースで言えば、「締め切りまでに請求書を提出してくれない場合、経理では支払いをしません」と言う説明の仕方になってしまいます。
性悪説アプローチで気をつけるべきこと
ルールを守らないこと ではなく、 約束を守らないこと を指摘する
何度注意してもルールを守ってくれない部門がいる場合、その部門に対して「ルールを守ってください」と言う事はもはや意味がありません。そうした場合対策としては、事前に「締め切りまでに請求書を提出してくれない場合、経理では支払いをしません」とメール等で明確に連絡をし、了承をとることが大切です。
このやりとりの後、納期を守られなかった場合は、「事前にお約束をした通り経理では支払いをしません」というコミュニケーションをとることができるため、論点が「ルールを守らないこと」から「事前の約束を守らなかったこと」に移ります。その後強い意志を持って、「支払いを行わない」と言う事前の約束を守れば、さすがに担当者も改善を試みてくれるでしょう。
責める相手は「部門」であり、「個人」ではない
一方、こうしたやりとりの宛先は「部門」であって「個人」であってはならないと言うのが私の持論です。実現したい事は部門間での意思疎通であって、特定の個人を攻撃することではありません。またプロセスがうまく回っていないのは、本質的には部門同士の意思疎通の問題であり、誰か1人の問題ではないからです。犯人探しをすることが目的ではないので、部門間での生産的なコミニケーションを心がけましょう。
性善説の組織を作るにはどうすべきか
とは言えこうした性悪説アプローチは、決して健全なものとは言えません。私がこうしたケースを経験した時、大抵の場合は、部門間での会話・連携がうまくいっていません。お互い相手の業務を理解しておらず、また相手の業務に対して敬意を払っていないため、ある種部分最適的な仕事の仕方になってしまっているのです。性悪説アプローチは最後の手段であり、このフェーズになってしまっている場合は、そもそも前段階でボタンの掛け違いが起こってしまっているということです。
したがって解決策としては、月並みですが、「積極的に会話をする」ということになるでしょう。そして私が考えるコーポレート人材が必要なスキルはまさにこれです。「あらゆる部門・組織のメンバーと円滑なコミュニケーションをとることができる」スキルは、これからのコーポレート人材に必要不可欠なものであると考えます。
相談されやすいコーポレート人材になる
同時にコーポレート人材としては、相談されやすい人間であるというのも大事な資質です。自分から能動的に集められる情報には限界があるため、前広にいろんなことを相談してほしいと思う管理部門の方が多いことでしょう。そのためには、様々な部門の方から信頼を勝ち取ることが必要です。
日々のちょっとした相談でも真面目に対応をして、信頼を積み重ねていく。こうした積み重ねが周囲からの信頼につながり、結果としてそれがコーポレート人材の市場価値の向上につながる、と私は考えています。